葬式の献杯挨拶

葬儀での献杯は、故人を偲びつつ、親族や参列者への感謝の気持ちも込めた、厳粛で大切な役目です。以下のような構成でご挨拶を考えるとよいでしょう。
【献杯の挨拶の基本構成】
- 一言お礼・自己紹介(省略可)
- 「ただいまご紹介にあずかりました、故人の○○でございます。」
- 参列者への感謝
- 「本日はご多忙の中、またご遠方より、○○の葬儀にご参列いただき、誠にありがとうございます。」
- 故人を偲ぶ言葉
- 故人の人柄や思い出、家族との関係など、簡潔に。
- 例:「故人○○は、生前より家族思いで、いつも明るく周囲を和ませてくれる存在でした。」
- 遺族としての感謝や決意
- 「故人の意思を引き継ぎ、家族一同、力を合わせて参る所存です。」
- 献杯の呼びかけ
- 「それでは皆さま、故○○のご冥福をお祈りし、献杯をお願い申し上げます。ご唱和いただけます方は、ご一緒にお願いいたします。」
- 「献杯」
- 一礼して「献杯」と述べ、杯を口に運びます(飲み干す必要はありません)。
【ポイント】
- 静かに、落ち着いたトーンで。
- あまり長くせず、1〜2分程度で。
- 故人との関係性に合わせて、思い出やエピソードを短く入れると温かみが出ます。
【献杯の挨拶:故人 父親】

ただいまご紹介にあずかりました、故◯◯の長男(長女)でございます。
本日はご多忙のところ、またご遠方より、父◯◯の葬儀にご参列いただき、誠にありがとうございます。皆さまに温かく見送っていただき、父もきっと感謝していることと思います。
父は、一言で言えば「厳格な人」でした。何事にも妥協を許さず、私たち子どもに対しても、小さな約束でも守るようにと口酸っぱく言い聞かせていたものです。宿題をさぼればすぐに見抜かれ、叱られましたし、「時間を守ること」「人に礼を尽くすこと」など、口うるさいほどに言われて育ちました。
けれどその厳しさの裏には、深い愛情と責任感があったのだと、今ならよく分かります。学校の行事には必ず顔を出してくれましたし、長期休みになると、家族でよく旅行にも連れて行ってくれました。決して口数の多い人ではありませんでしたが、旅先ではふと見せる笑顔や、子どもたちの喜ぶ顔を見て嬉しそうにしている様子が、今も鮮明に思い出されます。
また、父は地域の町内会活動にも熱心で、ゴミ当番や防災訓練、子どもたちの見守りなど、頼まれればすぐに駆けつける、そんな人でした。「◯◯さんがいてくれると助かる」と、近所の皆さんからも信頼されていたようです。口数少ない分、行動で示す――そんな父らしい生き方だったと思います。
家族にとっても、地域にとっても、頼もしい存在だった父を失い、寂しさは尽きませんが、父の姿勢や教えは、私たちの中に確かに残っています。これからはその思いを胸に、家族一同、力を合わせて歩んでまいります。
それでは皆さま、父◯◯の冥福を祈り、献杯をお願い申し上げます。ご唱和いただけます方は、ご一緒にお願いいたします。
(※杯を持ち、一礼して)
献杯。